伊豆の最奥の大沢はかつては世界の絹市場を動かすほど繁栄を極めた場所であったらしい。今は静かすぎる田舎だが、当時の繁栄の片鱗が、この大沢温泉ホテルの建物の一部に残っている。その絹産業の立役者を先祖に持つ依田家は、さらに千年の血筋を遡り、源平合戦の際、木曽義仲に属し京に攻め上った一族であるという。関東大震災で横浜に絹の拠点倉庫を持っていた依田家は絹産業のすべてを失う事となり廃業。昭和36年に、屋敷を修復し旅館として再スタートした。当時の豪商の暮らしを彷彿とさせる建物は推定築320年。どんな人達が、何を思い、ここに暮らしたのか、心が過去に飛ぶ不思議な空間がそこにある。畑で野良仕事をしているような土地のおばちゃんが、素朴・朴訥・要領悪く もてなしてくれるのが妙にマッチしている。春は目の前の那珂川が桜並木となるが、訪れる人も少なく静かに清流が流れてゆく。武田の落人として、依田家がこの地に流れ着いた400年前も、同じように澄んだ水が流れていたに違いない。

大沢温泉ホテル 依田之庄

2011年04月02日〜2011年04月03日