京都嵐山 星のや京都

2012年11月23日〜2012年11月24日

大昔、旅館の市場開拓は長年のご贔屓さんのリピート訪問とその口から評判をたててもらう以外なかったはずだ。しかし昨今は、とにもかくにもメディアとインターネットが先走り、開業前の、現地がまだ工事中のうちから評判を立てるというやり方が主流だ。星のリゾートはイチから宿を建設するのではなく、閉館したり経営が思わしくない旅館・ホテルをリノベーションし「星の」という看板に掛け変えてスタートする再開発型。そして宣伝には開業前から渾身の力が入り、時流とマスメディアにうまく乗るタイミングも逃さない。星のリゾートの宿はフォトジェニックで計算高い。その雰囲気を売り込むメディアへの露出度が目を引く。それ故、現実と宣伝から感じ取った期待感のズレが落胆を呼ぶ可能性もあるだろうなと思っていた。しかし一度行ってみなければ、それはわからない事で、嵐山の紅葉のピークを狙って、予約を入れてみた。部屋数が少ない超人気宿を予約するのは楽ではない。遅くとも1年半前から計画する必要がある。いきなり思い立ち「そうだ京都行こう!」では絶対に実現不可能な滞在なのだ。各所で紹介されている様に、嵐山渡月橋から専用の船でユルユルと10分ほど川面を揺られ宿に迎え入れられる。到着の船着場では、客室担当のスタッフ方が敬々しく待ち構えており、こちらから名乗らずとも、出発の船着場から伝えられたと思われる顧客の特徴で「○○様」と向こうから声が掛けられる。導入部分からしてアマンリゾート系である。

旅館が建っている場所は、渡月橋からは1.2キロほど上流に奥まっており、星のや以外は何もない。船での導入以外は軽自動車一台がやっとという幅の川に沿った細道が唯一の陸路。しかしこの細道は生活一般道路ではなく遊歩道のようなもの、宿泊客が車で往復することはできないし宿に駐車場もない。渡し舟で向かうという、不便を特別感に置き換え価値あるものとしている。

江戸時代の豪商、角倉了以が私邸としてた場所が、明治時代から「嵐峡館」と言う旅館として100年あまり営業し、旅館主人の亡き後、星のやの再開発となったそうだ。

星のやのコンセプトは非日常の空想の世界だと言う。そのコンセプトには十二分に沿った宿かと思う。100年以上も前からある枝ぶりのよい紅葉や桜の木々に囲まれた宿は、川から見ても優雅だ。「よくもまぁ、こんな所に・・・」と誰でもつぶやく。

早めの予約が功を奏して、一番景観のよい月橋の部屋を取ることができた。部屋の窓には紅葉と碧い川面が写り、大変美しい。広さも2名ならば十分だ。すべての部屋が渓流に向いており全室デザインが違う。ただ部屋も宿全体も美しすぎて遊びがなく、崩して食べられない美しすぎるケーキというような印象だ。

星のリゾートのポリシーは、基本は連泊の素泊まり。その基本形に夕食や朝食、その他モロモロのお遊びがすべて有料オプションとしての追加されトータル料金となる。客の自由が効くように組み合わせ自由とアピールされてはいるが、何も考えずに、宿に「おまかせ」という癖がついている身には、あれこれ考えねばならない事に、かえってストレスがたまる気がした。星のやは、ミシュラン星をとったそうだが、どうしたわけか、周辺からは食事への絶賛の声は聞かれず、悩んだ末、夕食は祇園に出かけ、朝食のみ宿に頼む事にした。

何度も京都に来ていて、少し目先を変えた所に泊まりたい方、あるいは星のや京都に来ること自体が目的の方、カップルでムードを優先する方には良いと思うが、星のやのコンセプトを理解せずに来てしまうと、満足度は低いかもしれない。携帯も通じずテレビもない、ボ〜っするか本でも読むかという贅沢な時間を過ごすわけだが、そういう過ごし方が合わない人には、かえってストレスだろう。外界と隔絶されているゆえに、何かして遊ぶには有料オプションを選ばざるをえないという不満を聞いたことがある。自由なようでいて自由なアレンジが効かない滞在に、好みと評価が両極端に別れる宿だなというのが実の所の感想。

写真写りのいい、美しくユニークな宿。若いスタッフさんも一生懸命だ。そうそう来ようと思って来れる所でもない。しかし、計算高く作られすぎて、何か疲れた。宿自身にもゆとりがないように感じられた。さらに5年ほど経ち、安定感が出てきたかなと思う頃、再訪してもいいとは思う。今はまだまだ熟成待ちの若いワインのようだ。

京都以外にも軽井沢や石垣の竹富島、2015年には富士と着々と拠点を広げている星のやだが、私の好みとはちょっと違う宿だったが、ファンや信奉者は多いようで、今後も勢いは衰えないだろう。

また来たい度:★★★(5★満点)

オススメ:とにかく静かに過ごしたい方

インターネット:室内で無線LAN、有線LAN どちらも可能。ライブラリーにMac有り。

携帯電話:docomoアンテナ圏外~1本  auアンテナ1~3本 /  e-mobile 圏外