京都府京都市 京都俵屋旅館

2013年01月25日〜2013年01月26日

普段の生活では「伝統」の二文字は気にもとめていないが、ここに来ると、その奥深さがジンワリと身に染みこんでくる。

故スティーブ・ジョブズ氏が来日の際に常宿としていたという老舗旅館は、毎日を繰り返しながら、また新しい伝統を紡いでいる気がする。京都の旅館の中でも最古と言われ、驚く事に創業300余年になるという。江戸から明治期にかけて、公家や大名の常宿という位置づけだった事から、高い要求に応えるための、妥協を知らない独特の路線を何百年もひた走ってきた。その姿勢は「俵屋の不思議」という書籍まで出るほどで信奉者の数も半端ではない。ひとたびファンになってしまうと、熱病のようにリピートしてしまう顧客が多い。

室内にあった、11代目当主 佐藤 年さんが書かれた「俵屋相伝」に、なるほどと思う一文があった。「ほどほど」とタイトルしたページに「最近、野菜でも豆富でも、美味で濃厚なものが多くなった」事に触れ「それはそれで、味を楽しませてもらっているが、ふと疑問に思う・・・」「濃密な味の食物を毎日食べられるのか・・・」と。「食物にかぎらず何事も過ぎることは如何なものなのだろう。もてなしも家の造り様も過ぎれは暑苦しい。人への心遣いも見えてしまえば野暮だし、少し足りないと見えるものの方が見え過ぎるよりは程よい具合でゆったりと心地よいように思える〜」「何事もほどほどが坐り心地が良い〜」と締めくくられた当主の文章は、俵屋旅館全体に漂っていると思う。

俵屋旅館に対する好みの賛否両論は極端で、ファンになるか、まったくのダメ出しかの、どちらかのような声を聞いている。物質的な充足を強く求める現代的な「サービス」や施設の近代的使い易さ、ゴージャスさを求める人には、満足感は必ずしも高くないと思う。こちらは、ひたすら濃密な味の野菜・豆富が好きな口。しかし、畳にごロリとなった時の心地よさと、日本家屋の低い目線への追求、食事の箸のわずなな湿り気、厳選に厳選をした季節寝具のクオリティ、駐車場から出庫されて来た車の車内の前もって考えられた温度・・・などなど、「目に見えないスゴ技配慮」に対して価値を感じる人には、すばらしい大人の宿と映る。こちらが「少し足りないのではないかと思える程度がいい」という人達と思う。

今回は、定礎が俵屋の中で最も古く江戸時代後期と言われる「泉」の部屋に宿泊。18室ある部屋は、一年に一部屋づつ改修をするそうだ。「泉」の部屋もモダンに改装され、冬でも緑が美しい坪庭と土間と部屋が一体化した凛とした美しさが部屋の空気さえ変えている。底冷える京都の冬も床暖がここかしこに敷かれ、シェードや天窓は電動で作動するというハイテクも隠れていて面白い。京都市内のど真ん中、近くには幹線が通っているとは思えないほど静かで、館内の空気はヒッソリとしている。

調度品には数百年余のお宝がさりげなく置かれ、それらを見ながら館内をジックリ歩くのも楽しい。

俵屋の「旅館の道」は、ただ上品で物腰が柔かいだけではなく、認めない物は撥ねつける頑固な強さも感じる。お客をそうそう甘やかしてはくれない。ここに泊るからには、気ぜわしくせず、ボ〜っと何もしないで、長い物に巻かれるように、俵屋に巻かれて、時の流れるのに身を任せて過ごすのが一番でしょう。静かで澄んだ時間を肌で感じて吸収できます。

また来たい度:★★★★★(5★が満点)

インターネット:室内有線LAN可、利用無料。PC持参

携帯電話:docomoアンテナ5本 auアンテナ4本 /  e-mobile 3本 LTE