京都府京都市 京都俵屋旅館

2013年08月24日〜2013年08月25日

本来、旅館やホテルの予約時には旅行業約款という条項が、お約束事の目安となる。予約客に必ず示さなければならない情報がいくつかある。しかし、この俵屋旅館は、まぁ、旅行業という法律ができる何百年も前から旅館を営んでいるのだから、別格感がある。チェックアウト時に次の予約を入れたとしても、その部屋の料金も告げられないし、キャンセルチャージが何日前から発生するかも知らされない。支払い時まで、その部屋が幾らなのかわからない。裏を返せば、値段が幾らになるのかなど、気にもしない人達が顧客という事なのだろうか・・・。とにかく、ここは別世界の感がある。ズッシリと重く、京都らしい慇懃な空気の中に沈み込むような感じがする。故スティーブ・ジョブズ氏が来日の際に常宿としていたという老舗旅館は、どんな所かと通い出し、今回で3回目となった。毎回、部屋を変えてみるのが、なかなか楽しい。今回は「翠」という部屋をお願いしてみた。太陽が移ろい行く刻々、光と影が部屋の中に作る筋道を、あるいは雨粒が坪庭の葉につくるリズムと流れを、そんな日常では気にもとめない日本の美を思い切り堪能できる窓を、毎回惚れ惚れと見つめるのが好きだ。江戸から明治期にかけて、公家や大名の常宿という位置づけだった事から、高い要求に応えるための、妥協を知らない独特の路線を何百年もひた走ってきた。その姿勢は「俵屋の不思議」という書籍まで出るほどで信奉者の数も半端ではない。ひとたびファンになってしまうと、熱病のようにリピートしてしまう顧客が多いそうだ。

しかし俵屋旅館に対する好みの賛否両論は極端で、ファンになるか、まったくのダメ出しかの、どちらかのような声を聞いている。物質的な充足を強く求める現代的な「サービス」や施設の近代的使い易さ、ゴージャスさを求める人には、満足感は必ずしも高くないと思う。しかし、畳にごロリとなった時の心地よさと、日本家屋の低い目線への追求、食事の箸のわずなな湿り気、厳選に厳選をした季節寝具のクオリティ、駐車場から出庫されて来た車の車内の前もって考えられた温度・・・などなど、「目に見えないスゴ技配慮」に対して価値を感じる人には、すばらしい大人の宿と映る。

決してベタベタ感はなく、顧客との間にはキッパリとした線が引かれているような、凛とした雰囲気がここかしこに漂う。物腰、言葉は柔らかいのだが、顧客を甘やかさない隙のない態度は、何のビジネスにとっても見習う所がある。

料理は、古典的と思われる会席で、一皿一皿の量が多めとなっている。昨今ハヤリの小料理屋や会席日本料理屋に多い創作料理は控え目で、あくまでも古典的。日本中から多種多様の酒を取り揃えているという事はなく、酒類のラインナップはシンプルで平坦、凝ってはいない。しかし、持ち込みに対して寛容で、持ち込み料も取らない。酒(水物)で勝負しているんじゃないという心が見え隠れする気がする。流石の俵屋旅館である。

ここに泊るからには、気ぜわしくせず、早めにチェックインして、お風呂に入り、ボ〜っと何もしないで、長い物に巻かれるように、俵屋に巻かれて、時の流れるのに身を任せて過ごすのが一番でしょう。静かで澄んだ時間を肌で感じて吸収できます。

また来たい度:★★★★(5★が満点)

インターネット:室内無線LAN可、利用無料、パスワード有り。PC持参

携帯電話:docomoアンテナ5本 auアンテナ4本 /  e-mobile 3本 LTE