長野県 大鹿村 旅舎 右馬允

2013年10月12日〜2013年10月13日

秋風に金木犀の香りが漂い始めると、いよいよ松茸の季節。今年の秋は「右馬允(うまのじょう)」を予約し、山また山の南信州大鹿村に出かけてみた。

中央道の松川インターを下り、細い国道を40~50分奥へ奥へ走れば大鹿村。この道中は、細い国道とは言え上下の車線がちゃんとある。舗装もされている。落石注意のカ所とカーブもやたら多いが、心配するほどではない。但し、地元車は40キロ制限の道を80キロ以上で走っている為、こういう地元の人に後ろに付かれて煽られたり追い越されたり、あるいはすれ違ったりの時の方が緊張する。カーブでいきなり高速の対向車に出くわすわけだ。地元車はカーブでスピードを緩めるような事はしない。だから宿までは道路状態より地元車にご注意を。そして日没後は、真に暗いカーブ道。右馬允の正確な位置はナビでは掴めない為、村にある1〜2カ所の看板が頼り。真っ暗なカーブ道を避け、宿の看板が見える明るさのうちには到着したい。

宿までの道のりに苦はないが、村周辺の、絶景ポイントに車で行くには、それなりに気合いが必要。細く未舗装の車一台分の道をウネウネと標高2000メートル近くまで登ることになり、対向車が来たらアウトのカ所の連続だ。標高2000メートルでもブイブイ走る山慣れした車に要注意。彼らには谷側優先、上り優先などという教習所の交通ルールは通じない。しんどい山道だが、頑張って登れば、南アルプスの息を飲むような景観を独り占めできるスポットが点在していて、お薦めだ。

お宿は、前島さんご一家の、お祖母ちゃん、ご主人・奥さん・そして3人のお子さんの3代が切り盛りされている。なんとも仲の良いご家族からは、大鹿村をこよなく愛しているオーラが、よく伝わって来る。その雰囲気は「旅館に宿泊」ではなく「民宿かユース」あるいは「伯父さん叔母さんちに訪問、従兄弟にも会ってきたよ」いうイメージに近い。

料理は、9月下旬から10月半ばまで、地物の松茸をふんだんに使ってくれる。代々伝わる、貴重な古い皿に盛られた料理は、皿にも料理にも心が嬉しくなる。松茸を惜しげも無く口いっぱいに頬張る! 特に松茸と信州プレミア牛を使ったすき焼きは絶品で、信州の水と空気で育った食材は高品質だ。地酒も美味い!満腹でも苦しくないのは、自然のエネルギー満載の山の幸を頂いているからだろうか。ちなみに、ここ大鹿村は、日本最大級の断層系である中央構造線が走っており、磁石の針が働かない不思議な磁場が「パワースポット」として脚光を浴びている。そこでとれる野菜達はパワーがイッパイと言われている。関東から九州まで横に走るこの構造線は、南信州では地表に露出しているカ所があり、2つのプレートがぶつかり合う色の違う岩肌は、地質学に興味がある人にはたまらない場所と思う。小さい村ながらも、溢れる花々、南アルプスの景観や登山、食べ物、そして地質、隕石衝突のクレーター、満天の星の観測地。なによりも230年続く村人が演じる地芝居の大鹿歌舞伎を始めとした村固有の文化。小粒でピリリとする大鹿村には魅力がいっぱいだ。その村に38代続く前島家は蔵がいくつも残る事から見ても、村の名士だったに違いない。前島家の古文書は、名古屋や長野の大学が研究素材として使い、その後博物館に収められている。大鹿村と前島さんちは奥が深いのだ!

さて「旅館」ではなく「民宿か親戚の家」に近いと書いたが、理由のひとつは、身の回りのアメニティ系は全部持参して来る事をお薦めしたいからだ。右馬允にあるアメニティは歯ブラシだけだ。部屋にある備品はバスタオル・小タオル・浴衣・丹前・ティッシュ、これだけ。風呂には固形石鹸とリンスインシャンプーのみ。脱衣室にドライヤー1台。これで全て。男性には十分かもしれないが、女性には不足が多すぎる。ふたつ目は 施設面。風呂とトイレは1階の客と2階の客の共同で一箇所のみ。どちらも清潔ではあるが、数がなく他人様と共有というのは辛い。夜中にトイレに起きる年齢になると、暗さの中、距離があるのは神経を使う。3つ目は2組の宿泊客の間の配慮を宿側がする気がない事だ。たとえば風呂をどちらかの部屋の客が長々と使っていれば、他の部屋の客はずっと待つ。夕食前や朝はかち合う事が多いが、宿側が客同士の公平さを配慮する気配はない。また情報はこちらから聞かない限り、向こうからの説明はほぼない。極めて言葉少なげだ。説明がいらないリピーターが多い為だろうか・・? 「適当にゆっくりしてってやぁ〜」という放りっぱなし宿は好きだが、それも度がすぎれば「旅館」ではなく、やはり「親戚の家」だ。このように書くのも実は理由がある。今回、ストレスだったのが、実は別宿泊客のうるささであった。別組が0歳の幼児連れで、風呂は1時間半以上占拠。宿泊客の食事は、全員一緒の食堂テーブルだ。子供はうるさいのが仕事なので我慢するとしても、その親もアルコールが入り子供を叱る声が子供よりうるさい。我々はユッタリと風呂にも入れず、親子共々うるさい人達と一緒に食事・・・料理はすこぶる美味であったが、その環境はまるでファミレス。狭い空間で他人の子供の金切り声はキツイ。

我々は、食べ終えると早々に食堂を引き上げた。静かな中で大人の食事を楽しむ、その為の大鹿村訪問だったのだが、普段の都会の生活よりもうるさい一晩になった。我々にとっては不運中の不運・・・。どういう人達と一緒に宿泊となるかは運次第、誰が悪い訳でもないのだが、静かな大人宿で、乳幼児の同席は予想外だった。今回、夕食時間は宿から一方的に18時に2組一斉スタートと告げられたが、こういう場合、宿業の配慮としては、30分から1時間はずらしてのスタートが2室の公平さには望ましいのではないだろうか。そんな経験から「プロ魂の旅館業」ではなく「たまにしか会わない親類の家」に行く感覚でいた方がよいと、ハナから「そういう所なんだ」と思って訪問した方が満足度は上がると思う。

また来たい度:★★★★

インターネット:不可   携帯電話:docomoアンテナ5本 au アンテナ3本 /  e-mobile 圏外

タイヤ:冬季12月終〜3月くらいは道路凍結、要スタッドレス、初雪は1月初め頃が平均