京都市 大悲山 美山荘

2014年01月25日〜2014年01月26日

「必ず四駆のスタッドレスでいらしてください」何度も念を押された。「京都市内」と言うには、あまりに京都離れしている花背という山奥にある。京都駅に降り立ち暖かいと思っても、花背は1メートル以上の雪の中だ。

かなり以前から、京都の山また山の奥まった場所に評判の料亭旅館があるとは知っていたが、○○荘と「荘」がつくと、なんだか山荘か山小屋のような響きがあり、いったい何が人々を惹きつけているのやらとは思えども、具体的に興味も感心も湧かなかった。しかし、ある日見た「情熱大陸」という番組に取り上げられたご主人の風貌は、想像していた人物とは全く違い、その評判を自分で体感してみたいと思い始めた。しかし、正直「まぁ、一度行ってみてもいいかな」程度の気持ちではあった。

春や秋は桜だ紅葉だで忙しく、とても時間が割けないので、あえて我が家のイベントが極少の冬に予約を入れてみた。つまり、それが「まぁ、一度行ってみてもいいかな」の気持ちの現れだった。

キツくアドバイスされたように、四駆のスタッドレスで向かった。途中までは雪などまったくなく「なんだ、スタッドレスじゃなくてもよかったな」という気持ちが心をよぎる。しかし対向車とすれ違いが難しくなる道幅に入り込むと、周りの風景は一変し、真っ白な雪で覆われ、さして除雪もされておらず、ところによっては、スタッドレスでもズリズリと滑る。この時になって、キツいアドバイスの意味がようやくわかった。いかにもタヌキや鹿に遭遇しそうな細道をジャリジャリと雪氷を踏んで進むこと一時間あまり。雪道ではスピードが出せないので、京都中心からは2時間くらいかかっただろうか、真っ白な雪の中に「建物」が見えてきた。

「ここかな・・・?」あまりに雪深くて看板も雪に覆われ、よくわからない。車の中から玄関?とおぼしき場所を確認しようとしていると、雪の中、女性が駆け寄ってくる。若女将さんだった。

建物は、母家のある「山の棟」と宿泊部屋のある「川の棟」の二手にわかれており、通された川の棟は、想像していたように質素で色が押さえられ、物静かだった。予約していた部屋は「石楠花」という一番奥の部屋。シンプルな10畳あまりの部屋は、なんとも上品な部屋だった。 決して華美でも贅沢でもないのだが、大人の空間に相応しい部屋だった。一枚ガラスの大きな窓が川に向き、その川にそってテラスの設えがある、夏になったら、このテラスでビールなんて最高だろうなと、すぐに夏の再訪を考えてしまった。「まぁ、一度行ってみてもいいかな」がひっくり返った瞬間だった。

お抹茶と、とち餅のぜんざいを頂きながら、部屋を見渡す・・・。音の出るもの、テレビなど何もない。音は川の流れと軒先に伸びたツララから滴り落ちる水滴の音だけだ。現代人の必需品「携帯」を見ると・・・docomoはアンテナがしっかりしているものの、auは全滅。宿の無線LANは、まるで月から飛んできた電波を受け取るほどに「かすか」だ。う〜んと唸ってしまったが、それが美山荘に来る意義の一つでもあるのだろう。ここに来るには、自然と向き合い、好きな本でも読むのが一番なのだろう。

貸し切りになる川沿いのお風呂は、今の時期、雪見風呂だ。のびのびと利用させていただいた後、係の女性が生姜湯を持って部屋を訪れる。夕食の時間の確認だ。18時半か19時のようなので、19時でお願いする。正座が膝・腰のトラブルで長くできない為、事前に椅子席をお願いしていた為、隣の「すもも」という部屋の掘り炬燵風のテーブルを利用しての夕食だ。

料理のお皿は、いずれも山の宝物がいっぱい詰まった大人の味満載の数々だった。量はやや多め、お腹イッパイなのだが、そのイッパイさが、苦しすぎる嫌なイッパイではないのだ。冬のジビエ、鹿・熊・猪が登場するのも今の時期ならでは。深い雪の下に待つ小さな蕗の薹。そのほろ苦さに春の予感を楽しんだ。この料理の本当の良さは、若い人にはわからないだろうなぁと思ってしまう。

なるほど、評判は本当なのだな。静かで洗練された「もてなし」を受け、季節が散りばめられた上品な料理を頂き、川の流れの音の中でグッスリ。素敵な京都の奥座敷でのお籠り。すっかりファンになりました。

また来たい度:★★★★★(5★満点)

インターネット:無線LAN可、利用無料。PC持参。しかし電波は極薄

携帯電話:docomo アンテナ4本 au 圏外