伊豆 天城湯ケ島 あせび野

2016年01月01日〜2016年01月02日

2002年にあせび野がオープンした雑誌記事を見つけたのは全くの偶然だった。年末年始の予約ができるかと、ダメモトで電話すると、これまた幸運にも、私の電話の直前にキャンセルが出たとのこと、すかさず予約を頼み、それが、我が家が「あせび野」で年末年始を過ごすようになるキッカケとなった。

それ以来、年末年始に限らず、桜、新緑、蛍、紅葉といろいろな季節を訪れているが、やはり印象的なのは元旦だ。

中伊豆の天城湯ヶ島は「伊豆の踊り子」の舞台となった場所で、今でも映画のシーンのように緑多く、山と山に囲まれ、日ノ出は遅く日没は早く、一日のうち、晴れていても太陽が届く時間がとても短い。冬に吹き抜ける強い風は天城の山からの雪の吹き降ろしで、とても冷たい。苔生した石と豆蔦に覆われた木々が鬱蒼としている味わいは、日照時間の短さが創りだしたものだ。

鮎の棲む澄んだ猫越川(ねっこがわ)に沿って、かつては、たくさんの旅館が立ち並んでいた天城湯ヶ島は、芥川龍之介や川端康成が長逗留をして小説を書いていたという場所だ。しかし栄えた時代も過ぎ、今は裏寂れた旅館跡が何軒も残る。割れたガラスの放置された建物が並ぶ様は、夏は肝試しにピッタリなのではないかと思ってしまう。その中でキラ星のように15年前に現れ、ずっと人気と安定感を保っている「あせび野」は、我家のナンバー1的存在だ。

親宿に「嵯峨沢館」を持つが、親宿よりも斬新さが光り、そこが気に入っている。女将が三つ指付きに来るような古いタイプの旅館が苦手な我々は、このアッサリとした雰囲気が好きで、今回で26回目の訪問となった。15年前といえば、旅館の各部屋に個室露天風呂が付きはじめ、部屋食ではなくダイニングで頂くスタイルが世に出てきた頃。あせび野はその先駆者的な宿で、初めて来た時は、何もかも嬉しい驚きだった。設備的にも斬新だったが、至る所に手すりが付き、段差がなく、廊下は広く、その頃バリアフリーを徹底している旅館は、ほとんどなかった為、老若男女万人をターゲットにし、配慮が隅々まで届いた気配り目配りに感心したものだった。その気配り目配りは衰える事無く、年々、進化しているから驚き。そして、あせび野の一番の財産は「人」だと思うほど、スタッフの皆さんは素晴らしい。明るくてサッパリと気取りがなく、適度な距離感も気持ちがいい。

40代の若い板長さんに変わってから4年目となる。お目にかかった事はないが、最初に彼の料理を食した時は、その「頑張りすぎた」料理に対し、率直に意見を言うかどうか迷ったが「まだ若い板さんならば変化もあるかもしれない」と思い、何も言わずに待つ事にした。彼の「挑戦しすぎ」の料理は、高価な食材のオンパレードで、その組み合わせに独り善がり感が強かった。また一品一品は完結していても、懐石というひとつのコースとして見ると、バランスがとれておらず、食べ終わった時のお腹に心地よさを感じることはなかった。しかし昨年5月に訪れた時、彼の料理に変化を感じた。努力の賜物と思う、随分と我々のストライク・ゾーンに近づいていた。今回の訪問では、前回の年末年始料理のバランスの悪さはほとんどなくなり、食べ終わった後の胃袋に心地よい満腹感があり、和の盛り付けもマスターされて、とても満足した。

前の年長の板長さんは、純和食の方で、料理以外の文化教養面も優れた方だろうと、その料理から伝わって来た。後任となった若い板長さんは、相当に荷が重かったに違いない。しかし前任の板長さんとは別な登山道から頂上を目指してほしい。これからも応援しつつ、変化を見守ってみようと思う。

また来たい度:★★★★★(5★満点)

インターネット:室内・ロビー共に無線LAN可、利用無料。PC持参 各部屋にiPadあり

携帯電話:docomoアンテナ3~4本 auアンテナ1本 /  e-mobile 3本