伊豆 天城湯ケ島 あせび野

2016年04月26日〜2016年04月27日

今思うと、以前の我々は新緑をゆっくりと楽しむなどという感覚はなかった。 

中伊豆の「あせび野」はオープン以来 我々の生活の節目に随分と大きな影響を与えてくれた。 春のあせび野は、勢いのある柔らかい萌黄色に溢れ、太陽に向かって木々のエネルギーが満ち満ちている。山全体がひとつの生き物のようだ。あせび野には、それぞれの季節に素晴らしさがあるが、一番力を貰えるのが春だと思う。

中伊豆の天城湯ヶ島は「伊豆の踊り子」の舞台となった場所で、今でも映画のシーンのように緑多く、山と山に囲まれ、日ノ出は遅く日没は早く、一日のうち、晴れていても太陽が届く時間がとても短い。冬に吹き抜ける強い風は天城の山からの雪の吹き降ろしで、とても冷たい。苔生した石と豆蔦に覆われた木々が鬱蒼としている味わいは、日照時間の短さが創りだしたものだ。

それ故、山々に春が来た事を喜ぶ木々の変わり身は早く、寒さに我慢し縮めてきた体を一気に伸ばすように芽吹く様は素晴しい。

親宿に「嵯峨沢館」を持つが、親宿よりも斬新さが光り、そこが気に入っている。今回で27回目の訪問となった。オープンの2002年といえば、旅館の各部屋に個室露天風呂が付きはじめ、部屋食ではなくダイニングで頂くスタイルが世に出てきた頃。あせび野はその先駆者的な宿で、初めて来た時は、何もかも嬉しい驚きだった。設備的にも斬新だったが、至る所に手すりが付き、段差がなく、廊下は広く、その頃バリアフリーを徹底している旅館は、ほとんどなかった為、老若男女万人をターゲットにし、配慮が隅々まで届いた気配り目配りに感心したものだった。その気配り目配りは衰える事無く、年々、進化しているから驚き。そして、あせび野の一番の財産は「人」だと思うほど、スタッフの皆さんは素晴らしい。明るくてサッパリと気取りがなく、適度な距離感も気持ちがいい。

40代の若い板長さんに変わってから4年目となる。お目にかかった事はないが、最初に彼の料理を食した時は、その「頑張りすぎた」料理に対し、率直に意見を言うかどうか迷ったが「まだ若い板さんならば変化もあるかもしれない」と思い、何も言わずに待つ事にした。彼の「挑戦しすぎ」の料理は、高価な食材のオンパレードで、その組み合わせに独り善がり感が強かった。また一品一品は完結していても、懐石というひとつのコースとして見ると、バランスがとれておらず、食べ終わった時のお腹に心地よさを感じることはなかった。しかし昨年5月に訪れた時、彼の料理に変化を感じた。努力の賜物と思う、随分と我々のストライク・ゾーンに近づいていた。今回の訪問では、トータルで完璧なまでになっており、食べ終わった後の胃袋の心地よさに満足。

料理は旅館の「一番の顔」。以前の年長の板長さんのコピーではなく、若い板長さんらしい懐石が仕上がってきた様子はとても嬉しい。

温泉に入ったら、あとは何もせず、ゴロゴロのろのろと部屋で過ごす。なんとも贅沢な大人時間です。

また来たい度:★★★★★(5★満点)

インターネット:室内・ロビー共に無線LAN可、利用無料。PC持参 各部屋にiPadあり

携帯電話:docomoアンテナ3~4本 auアンテナ1本 /  e-mobile 3本

但書;今回のレビューの「世古の湯」と かざはや以外の「貸切風呂」には今年1月に撮影した写真を使用しています。