東伊豆 富戸 月のうさぎ

2016年10月26日〜2016年10月27日

伊豆にハマって、かれこれ10年以上は経った。そのキッカケとなったのが、このお宿「月のうさぎ」だ。当時、予約したくても電話さえ繋がらない状況だったのに、ラッキーにもキャンセルが出た直後に私の電話が繋がり予約が叶った。初めて来た時は、今までの日本旅館の概念を、ひっくり返してくれる宿ができたと心から喜んだ。「これならストレスなく楽しむ事ができる」と思ったし、事実、伊豆に頻繁に通うキッカケにもなった。それまで我々は、日本旅館と言えば、居心地が良いものではなく、慇懃な着物の女将と場慣れした客を仕切る中居さん達がドッサリ、何百室もある大型のビルで宴会場の大広間は夜な夜な盛り上がり、社員旅行の酔っぱらいオジサン達がデレっと浴衣を着て廊下を闊歩していて、食事は冷えた部屋食、お風呂は大浴場が当たり前・・・いつもワサワサと落ち着かない、とそんなイメージを持っていた。

10年ほど前から、こういう旧態旅館が見直され、新しい形が現れた。各部屋に温泉露天風呂が付き、プライバシーが守られ、食事はダイニングに出かけてゆくというスタイルのなんと居心地がいい事か。目からウロコだった。しかし、古い概念を打ち破るのは、それなりに逆風も強く、ネット上では、「旅館界の新参者:月のうさぎ」に対しては、散々な酷評が飛び交っていた。確かに、新しいスタイルの宿はチャラチャラと見えたのだろう。酷評が飛び交う中でも、我々はここの気持ちの良さが好きになり、毎年やって来るようになった。オープンからほぼ毎年、今回で13回目の訪問となった。 

2010年7月に、経営者が変わって6年経った。創業オーナーの時の「暴れ馬」っぽい危うい雰囲気は、評判が悪くとも我々は好きだった。、今は良いも悪いも、丸くなった。落ち着きが増し、びっくり箱を開ける時のようなハラハラはなくなったが、おとぎの国のような不思議な空間にを維持する努力は買う。ある意味、創業オーナーのぶっ飛んだやり方の方が、危うくも面白みはあったが、やはり万人に受け入れられる為には、「やりすぎ」よりも「落ち着き」の方が重要なのだろう。ここ数年で、何というか俗世っぽい感じになってしまっていたのがちょっと残念。若いスタッフさんがが入り、すぐにいなくなる。人の回転が恐ろしく早い。それ故、とても不慣れな雰囲気の人もおり、雰囲気を盛りたてる事まで気が回らないマンパワーが残念、そういう若手の所作に誰も年長の人がついていないのが残念。やはり、雰囲気作りにまで気を配れるようになるには、最低でも3年は居着いて頂きたいのだが・・・。

180度の碧い大海原が、溶けこむように空の青とつながる絶景は、ここにしかない価値がある。宿を、ただ単に「宿泊の場所」という感覚でとらえていないものが、ここにはある。宿は「演出の場所」という位置づけで、ただ宿泊しただけでも、俗世から切り離された異空間「月のうさぎテーマパーク」に迷い込んだようで楽しい。俗っぽくはなってしまったが、何人かのシッカリ者の若いスタッフさん達は、着物を着こなし「うさぎワールド」の案内人だ。やっぱり月のうさぎは面白い。

料理は「おとぎの国のお食事」感があり、部屋の掛け軸などは「クスっ」と笑ってしまうような代物だ。それを「安っぽい」と言う人もいる、そりゃ、書家が 流麗に描いた掛け軸ではないが、目的が違うと思う。月のうさぎの掛け軸は、おとぎの国のドアを開ける魔法の巻物なのだ。書家の本物の作品が見たいのか、おとぎの国のドアを開けたいのか、求める物は人によって違う。 我々は「おとぎの国のカギ」がほしいわけで、それがわかるウィットに富んだお客さんが来れば満足度合も上がると思う。 訪問の目的が違えば、評価も正反対に分かれるだろう。「安物だ!」と何でもクソ真面目に受け止めていては人生面白くもない。

夜の海に映る月光が作る月の道を通り、露天風呂から天に昇れるようなシーンが好き。朝日が海上に作るオレンジ色の花道を通って今日という日がやってくるのを見るのが好き。東伊豆の光る波間と太陽が好き。これからも、この楽しみは続けて行きたい。

また来たい度:★★★★★(5★満点)

オススメ:カップル、ご夫婦、お忍び、静けさが好みの方

インターネット:室内無線LAN可、無料(ようやく可能になりました!) /   携帯電話:docomoアンテナ1本 auアンテナ5本 テザリング良好 / e-mobile 圏外

温泉:源泉を持たない為、温泉水を運んで来て加水加温循環式。お風呂後の肌のシットリ感はかなり劣ります。温泉水自体にこだわるマニアには向きません。しかし露天風呂からの絶景は、言葉がないほどの景観です。

その他:「離れ」と書いてある情報もありますが、正確には2軒つながりの長屋スタイルです。壁が隣と共有で木造であるため、音がよく抜けます。