伊豆 天城湯ケ島 あせび野

2017年01月01日〜2017年01月02日

2002年にあせび野がオープンした雑誌記事を見つけたのは全くの偶然だった。年末年始の予約ができるかと、ダメモトで電話すると、これまた幸運にも、私の電話の直前にキャンセルが出たとのこと、すかさず予約を頼み、それが、我が家が「あせび野」で年末年始を過ごすようになるキッカケとなった。

それ以来、年末年始に限らず、桜、新緑、蛍、紅葉といろいろな季節を訪れているが、やはり印象的なのは元旦だ。

中伊豆の天城湯ヶ島は「伊豆の踊り子」の舞台となった場所で、今でも映画のシーンのように緑多く、山と山に囲まれ、日ノ出は遅く日没は早く、一日のうち、晴れていても太陽が届く時間がとても短い。冬に吹き抜ける強い風は天城の山からの雪の吹き降ろしで、とても冷たい。苔生した石と豆蔦に覆われた木々が鬱蒼としている味わいは、日照時間の短さが創りだしたものだ。

鮎の棲む澄んだ猫越川(ねっこがわ)に沿って、かつては、たくさんの旅館が立ち並んでいた天城湯ヶ島は、芥川龍之介や川端康成が長逗留をして小説を書いていたという場所だ。しかし栄えた時代も過ぎ、今は裏寂れた旅館跡が何軒も残る。割れたガラスの放置された建物が並ぶ様は、夏は肝試しにピッタリなのではないかと思ってしまう。その中でキラ星のように15年前に現れ、ずっと人気と安定感を保っている「あせび野」は、我家のナンバー1的存在だ。

親宿に「嵯峨沢館」を持つが、親宿よりも斬新さが光り、そこが気に入っている。女将が三つ指付きに来るような古いタイプの旅館が苦手な我々は、このアッサリとした雰囲気が好きで、今回で28回目の訪問となった。15年前といえば、旅館の各部屋に個室露天風呂が付きはじめ、部屋食ではなくダイニングで頂くスタイルが世に出てきた頃。あせび野はその先駆者的な宿で、初めて来た時は、何もかも嬉しい驚きだった。設備的にも斬新だったが、至る所に手すりが付き、段差がなく、廊下は広く、その頃バリアフリーを徹底している旅館は、ほとんどなかった為、老若男女万人をターゲットにし、配慮が隅々まで届いた気配り目配りに感心したものだった。その気配り目配りは衰える事無く、年々、進化しているから驚き。そして、あせび野の一番の財産は「人」だと思うほど、スタッフの皆さんは素晴らしい。明るくてサッパリと気取りがなく、適度な距離感も気持ちがいい。

あせび野の年末年始の料理は、そのボリュームの大きさに我々は毎回胃薬持参で行っていた。しかし、今回は、味、見た目、ボリュームすべてに変化を感じ、中居さんに聴いたところ、今まで5年ほど板長を務めた方が退かれ、副板長を務めていた方が板長に昇格され料理を担当されているとのこと。量は今までの2割以上は少なくなっただろうか、その分、盛り付けと食器で工夫され、量が減っている事は食べてみないと気が付かない。我々のお腹にとっては、丁度よい具合にお腹がいっぱいになるボリュームとなり、今までのように最後の皿まで到達するのに四苦八苦する事がなくなった。また、おそらく洋食を手掛けられていた方だろうか、今までより洋食皿の味のメリハリがはっきりし、今まで時としてボヤケた味と平坦な盛り付けを嘆いていたものだが、それがなくなった。今回は年末年始を通して宿泊した為、量が減った事は大変喜ばしく、お腹の具合も健康的になった。しかし仮に一泊だけだった場合、あるいは40歳前半までのお客さんだと、少し物足りなさを感じる可能性もあるかもしれない。 次回はごく普通の日に一泊で伺う予定なので、一泊だけでもお腹が満足するかわかると思う。

今回は、新しいスタッフさんも数多く配置され、なんとはなしに合理性が上がった新生あせび野のように感じた。あまりに合理的になると、味気ないと感じる事も出てはくるが、それも時代と経営なのかもしれない。でも新旧の間で、うまく調和をとって頂ければ嬉しい限りだ。

また来たい度:★★★★★(5★満点)

インターネット:室内・ロビー共に無線LAN可、利用無料。PC持参 各部屋にiPadあり

携帯電話:docomoアンテナ3~4本 auアンテナ1本 /  e-mobile 3本